遺留分減殺請求と税務
遺留分減殺請求と税務について教えて下さい。
1, 申告後に遺留分減殺請求があった場合の税務手続き
遺留分の減殺請求があった場合の税務上の問題は、相続税の申告によって相続税額が確定した後に、他の遺留分権利者から遺留分の減殺請求が行われたときに生じます。
これは、被相続人が遺した適法な遺言に基づいて、相続人や受遺者が相続財産を取得し、相続税の申告を既に行っていますから、この後に、他の遺留分権利者から減殺請求があり、その履行により、相続財産と相続税額に異動が生じれば、既に申告した相続税額に過不足が生じるからです。
この場合のとるべき税務手続は次のとおりです。
(1)遺留分の減殺請求を受けた者
既に確定した相続税額が過大となるため、更正の請求をすることができます(相税32①三)。手続期間は、遺留分の減殺請求に基づき返還又は弁償すべき額が確定したことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。
(2)遺留分の減殺請求をしたことで財産を取得し、新たに相続税の申告義務が生じた者
納付すべき税額が生じるため、期限後申告をすることができます。(相税30①)。手続期限の定めはありませんが、申告が無い場合、税務署長による決定が行われます。
(3)既に相続財産を取得していたことで相続税の申告書を提出していた者が、遺留分の減殺請求によりさらに財産を取得した場合
既に確定した相続税額に不足が生じるため、修正申告をすることができます(相税31①)。手続期限の定めはありませんが、申告がない場合、税務署長による更正が行われます。
2, 実務上の対応
相続税法上は前記のような手続規定を設けていますが、遺留分の減殺請求があって相続税額に異動が生じても、相続人相互間で合意し、異動した税額分を金銭等で授受すれば、更正の請求と期限後申告・修正申告をする必要はありません。
ただし、遺留分の減殺請求を受けた者が相続税額の納付義務が生じるため、期限後申告又は修正申告をしなければなりません。この申告が無い場合、税務署長による決定又は更正が行われます(相税35③)。