相続トラブルに巻き込まれたら
遺言がある場合
遺言書の確認
相続が開始した場合、まず遺言の有無を確認することから始めます。
被相続人が遺言を作成している場合、通常は、相続人の誰かにその旨伝えていることが多いですが、誰にも伝えずに遺言を作成されているケースもありますので、遺言を探して頂く必要があります。
遺言書を発見したら
遺言の種類については「遺言の種類と特徴」をご参照下さい。
発見された遺言が自筆証書遺言であった場合には、家庭裁判所に検認手続きの請求を行う必要があります。
検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせ、遺言執行前に遺言書を保全し、後日の変造や隠匿を防ぐために行う手続です(なお、検認手続きは遺言が有効かどうかを確定するものではありませんのでご注意下さい)。
遺言の効力
・ 形式的要件
自筆証書遺言の場合、民法上定められた方式(詳しくは「遺言の種類と特徴」をご参照下さい)に不備があると無効となります。
公正証書遺言の場合には、公証人の面前で口授しているため、方式に不備があるとして無効になることはないと考えて良いでしょう。
・ 実質的要件
自筆証書遺言であれ、公正証書遺言であれ、遺言者が遺言作成時に遺言能力を欠いていたり(例えば、認知症などで意思能力に問題があった場合など)、遺言の内容が公序良俗違反となる場合(例えば、愛人との関係を維持する目的で作成された場合)などには、これらの遺言書は、実質的要件を欠く遺言として無効となります。
遺留分の侵害
・ 遺留分とは
遺言が有効であっても、その遺言の内容が特定の相続人の「遺留分」を侵害している場合には別途注意が必要です。
遺留分とは、一定の範囲内の相続人が最低限保障されている相続分のことであり、この最低限保障される相続分は遺言によっても奪うことは出来ません。
・ 遺留分の割合
この遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の1/3(1028条1号)、それ以外の場合は全体で被相続人の財産の1/2(1028条2号)とされています。
・ 遺留分権者
また、遺留分権者(遺留分が認められる者)は兄弟姉妹以外の法定相続人です。
・ 遺留分減殺請求
遺言の内容がこの遺留分を侵害している場合には、遺留分を侵害された法定相続人は、遺留分減殺請求を行うことが出来ます。
・ 時効に注意
もっとも、この遺留分減殺請求権には1年の時効があるので注意が必要です。
(民法1042条前段は「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から、1年間行使しないときは、時効によって消滅する」と規定しています。)
遺言がない場合
遺産分割調停
被相続人が死亡すると相続が開始し、法定相続人が、法定相続分に従って、遺産を共有する状態になります。
もっとも、この段階では、遺産はまだ法定相続分の割合に応じた共有状態に過ぎないので、具体的な遺産(不動産や現金など)を誰がどの程度取得するのかは遺産分割協議によって確定させる必要があります。
そして、この遺産分割協議は法定相続人全員によって行う必要がありますが、相続トラブルが発生し、遺産分割協議が整わない場合には、家庭裁判 所に対して遺産分割調停を申立てることになります。
遺産分割調停の手続き
この遺産分割調停の申立ての前には、まず、相続人の範囲と遺産を確定することが必要となります。
相続人の範囲については、相続関係者の戸籍調査によって行います。
戸籍調査の結果、思わぬ相続人が現れたりしますので当事務所が慎重に進めていきます。
遺産の範囲については、被相続人名義の不動産、株式、宝石等の動産類をチェックしながら行います。
次に、相続人の範囲と遺産が確定したら、遺産分割調停を、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所へ申立てます。
この調停は,相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てを行う必要があります。
なお、遺産分割調停の申立てが出来るのは、共同相続人だけでなく、包括受遺者及び相続分譲受人も可能です。
遺産分割審判
前記の遺産分割調停はあくまで調停であり、合意による解決を目的としたものですので、合意に至らないときには調停は不成立となり、遺産分割審判へ移行します。
そして、この遺産分割審判において、裁判所が相続人の相続分の割合を前提に、個別具体的な事情を総合考慮して各遺産の帰属について審判を下します。