遺言の種類と特徴

遺言の種類と特徴

 

遺言とは

遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う、遺言者の意思表示のことです。

遺言の意義(遺産に関するトラブルを回避する)

 遺言がないと遺産分割協議でトラブルになりやすい

遺言の無いときは、民法が相続人の相続分を定めていますので,これに従って遺産を分けることになります(法定相続)。

この法定相続に関して民法は、「子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。」などと定めています。

しかし、このように民法は法定相続人の範囲と法定相続分を定めていますが、この法定相続分の規定は、具体的な財産ではなく、遺産に対する各法定相続人の持ち分を抽象的に定めるのみです。

そのため、個別具体的な遺産(例えば、現金、株式、不動産など)について、誰がどの程度取得するかは遺産分割協議を行って確定する必要があるのです。

しかし、この遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があり、かつ、遺産分割協議成立のためには法定相続人全員が合意する必要がありますので、スムーズに遺産分割協議がまとまらないことがとても多くなります。

遺産分割協議でトラブルになると、親族間で熾烈な争いになりやすく、相続による親族が「争族」と化してしまいます。

 遺言でトラブルの回避

このような遺産分割協議におけるトラブルを事前に回避するために遺言という制度があります。

例えば、遺言により、自宅は妻のもの、現金については子供達で平等に分ける、株式については兄のものなどという風に、被相続人の遺産を具体的に特定して法定相続人に分け与えることが出来ます。

これにより、面倒な遺産分割協議を経ることなく、被相続人の遺産が相続人に具体的に帰属することになりますので、遺産分割協議におけるトラブルは巻き起こりません。

遺言の種類と特徴

 自筆証書遺言 

筆証書遺言は、遺言者が、紙に、自ら、遺言の内容の全文を書き、かつ、日付、氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成する遺言です。

この自筆証書遺言においては、必ず自書する必要があり、パソコンやタイプライターによるものは無効となります。

自筆証書遺言は、費用もかからず、いつでも書けるというメリットがあります。

しかし、自筆証書遺言はあくまでご本人が自分で作成するものですので、内容が複雑な場合には、法律的に見て不備な内容になってしまう危険があり、かえって後の紛争を惹起したり、無効になってしまう場合もあります。

しかも、誤りを訂正した場合には、訂正した箇所に押印をし、さらに、どこをどのように訂正したかということを付記して、そこにも署名しなければならず、その方式はとても厳格です。

また、自筆証書遺言は、その遺言書を発見した者が必ず家庭裁判所にこれを持参し相続人全員に呼出状を発送した上、その遺言書を検認するための検認手続を経る必要があります。

公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が公証人の面前で遺言の内容を口授し、それに基づいて、公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ公正証書遺言として作成するものです。

公正証書遺言は、公証人の面前で作成されるものですので方式の不備で遺言が無効になるおそれがないというメリットがあります。

また、公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べて安全確実な遺言方法であるといえ、相続に関するトラブルを回避する上で最適な方法です。

しかも、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続を経る必要がなく、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することが可能です。

なお、公正証書遺言は、その原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり隠匿や改ざんをされたりする心配もありません。

秘密証書遺言 

秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり、自書である必要はないので、パソコン等を用いても、第三者が筆記したものでも構いません。)に署名押印をした上で、これを封じ、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後に、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成されるものです。

このような手続を経ることにより、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にできますし、また、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができますが、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできず、遺言書の内容に法律的な不備があったり、トラブルの種になったり、無効となってしまう危険性があります。

秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。

 

 

 

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