遺産分割の前提問題について

2014-03-10

遺産分割の前提問題等に争いがある場合の解決方法について教えて下さい。

 

Q,遺産分割の前提問題として、相続人に該当するか否かについて争いがある場合、相続財産に該当するか否かにつき相続人間で争いがある場合、どのような解決策があるのですか。

A,まずは家事調停があります。この調停が調えば解決は可能です。しかし、実体法上の権利関係については、裁判手続をとらなければなりません。

前提問題の解決方法としては、

1, 家事調停を成立させる方法

2, 家事審判による方法

3, 民事訴訟による方法

などが考えられます。以下に前提問題の類型ごとに解説していきます。

1、 相続人でない者を遺産分割から除く方法

夫が亡くなり、相続手続のために戸籍を取り寄せたました。

そうすると、前妻との間との子が記載されていることがわかりました。

この子は、亡夫が外国に長期出張中に懐胎した子どもであり、亡夫の子ではなく、子どもの出生前に亡夫と前妻は離婚したと聞いています。

戸籍に亡夫の子として記載されている以上、共同相続人になりますので、その記載を訂正する必要があります。

この「子」は、戸籍上は夫婦の嫡出子と記載されていても、実体法上は嫡出推定を受けない嫡出子、すなわち、推定の及ばない子となります。

この場合、妻は利害関係人として「実親子関係の存否の確認の訴え」を提起し、確定判決を得て戸籍を訂正し、この「子」を相続人から排除します(なお、判例実務の運用を前提にしても、今回のケースであれば嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在確認の訴えを提起出来ます)。

親子関係存否の確定については、調停を申し立てることもできますし、審判をすることもできます。この場合、尋問などの証拠調べが必要になることも多いため、訴訟提起を促されるのが実務の扱いです。

2、 死因贈与の効力を否定する方法

父の遺産分割協議中です。

遺産の不動産登記を見たところ、自宅の土地建物について、妹が死因贈呈を受けたとして、所有権移転登記を得ていました。しかし死因贈与契約を締結した平成●年●月には、父は脳血管障害で何度も入院し認知症の症状もあり、とてもこのような行為ができたとは思えません。家庭裁判所の遺産分割手続で、死因贈与契約の無効を争うことができますか。

家庭裁判所の遺産分割手続内で問題提起をすることは可能です。

兄弟間で話し合いが調えば、調停を成立させることはできます。

ただ、合意に至ることができなければ調停は成立しません。

こうした実体法上の権利関係については、審判には既判力がないため、審判をすることなく裁判手続にゆだねるよう促されるのが実務です。

調停(審判)係属中に、遺産の範囲について争いが生じて訴訟が係属したり、訴訟提起が見込まれる場合には、調停(審判)の取り下げを促され、訴訟の決着がついたときに、改めて遺産分割調停(審判)の申立てをすることになります。

いったん申し立てた調停(審判)を取り下げて、訴訟を提起することは時間も手間も取られることになりますので、どの方法によるのか最初によく考える必要があります。

本問の場合は、死因贈与契約の無効を確認するとともの、父→妹の所有権移転登記抹消登記手続を求める訴訟を提起することになります。

3、 生前の財産領得を争う方法

母の遺産分割協議を行っています。兄から母の預金残高を知らされましたが、生前の母の経済力から考えると、その遺産としてはあまりに少なく、兄がかなりの額を勝手に引き出したものと思われます。家庭裁判所の遺産分割手続では、兄が引き出した預金についても解決することができますか。

2と同じように調停で解決を求めることができます。
合意ができなければ兄に対し民事訴訟を提起します。

兄が引き出して自分の占有に移したとなると、兄に対する請求権は、それぞれの共同相続人に法定相続分ずつ帰属することになります。

具体的には、それぞれの相続人が預金を払い戻した者(兄)に対し、不法行為又は不当利得返還請求を提起することになります。訴訟提起に当たっては、預金通帳の取引履歴を取り寄せる必要があります。通帳を管理している兄から取引履歴の開示を受けられない時には、金融機関に対し開示請求をします。

訴訟の結果、「この金員は兄が母からもらったものである」と棄却された時には、兄の取得分は特別受益とみなされることになります。

上記の裁判に時間がかかりそうな時には、2と同様にいったん調停(審判)を取り下げるか、一部分割として兄が払い戻した額を除いた残余の遺産について調停(審判)手続をすることになります。

 

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