遺留分算定〜寄与分を控除〜
2014-02-13
先日なくなった父は生前に公正証書遺言を残していました。その内容は、父の財産全部を長男の私に遺贈するというものでした。相続人は私と姉と妹だけで、父の遺産は、総額4000万円くらいです。私は、一人で障害者である父の面倒を見てきており、その出費は1000万円を下りません。ところが、先日、姉と妹は、私に対して、遺留分減殺請求訴訟を提起してきました。 寄与分というものを聞いたことがありますが、私は裁判でその寄与分を主張出来ないのですか。
寄与分とは、法定相続分に基づいて相続人の具体的相続分を算定する際に相続人間の公平を図るために認められたものをいいます。
被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合に、被相続人が相続開始時において有した財産の価額から寄与分の額を控除した額を相続財産とみなします。
今回であれば、3000万円のみが相続財産であって、これを基礎にして遺留分を算定すべきと考えるのが長男の意見でしょう。
ところが、遺言や生前贈与がなされた場合に、遺留分の算定をする際に基礎となる財産の価額は、法律上、被相続人が相続開始の時において有していた価額に特別受益の価額を加算したものとされていますが(民法1029条1項)、寄与分を控除するという規定がありません。
ですので、相続財産について特別の寄与をした者が被相続人から遺贈を受けた場合に、遺留分減殺請求訴訟において寄与分を主張することはできないとするのが通説の見解です。
実質的にみ、特別の寄与をしたからこそ、その人は被相続人から遺贈を受けたと考えられます。
そうすると、長男の主張は認められず、4000万円を基礎に遺留分を算定することになります。
もっとも、話合いの場である遺留分減殺調停においては、寄与分を控除すべきであると主張することは可能です。
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