財産分与と退職金
退職金も財産分与の対象になりますか。
退職金には、給与の後払い的な性質がありますので、退職金も給与と同様に財産分与の対象になりえます。
したがって、退職金がすでに支払われている場合には、退職金が財産分与の対象になることは争いがありません。
この場合、配偶者が退職金の形成にどれだけ貢献をしているのか(寄与期間割合)を算定し、財産分与の額を計算することになります。
具体的には、退職金の金額×同居期間÷勤続年数×寄与割合、という計算式によることが多いでしょう。
では、退職前の場合はどうでしょうか。
そもそも、退職金が実際に支払われるのは退職のときであり、会社の経営状態や退職理由によっては支払がされない可能性もあり、確実に支払われるわけではありません。また、その金額も退職するまでは確定出来ません。
そのため、退職が何十年も先であるというケースでは、一律に退職金を財産分与の対象としてしまうのは不都合です。
したがって、退職金を財産分与の対象とするためには、退職金の支給が確実であると見込まれること、つまり、退職金支払いの蓋然性があることが必要とされています。
この退職金支払いの蓋然性の判断は容易ではなく、一律に決することは出来ませんが、中小企業であれば退職が2年以内であることが目安とされています。
公務員の場合は、倒産の危険やリストラの可能性も低いので、ある程度退職が先でも蓋然性ありと判断される傾向にあります(地方公務員の場合で、13年後の定年退職金を認めた裁判例もあります)。
大企業の場合は、ケース・バイ・ケースという他はありません。
財産分与の基礎となる退職金の額を決定するには、離婚時(別居時)に会社を辞めたらもらえる分を仮定的に計算し、その金額を分割するという考え方が主流でしょう。
この場合、『退職金相当額』に対する分与額を算定する計算式は、離婚時(または別居時)の予定退職金額×同居期間÷在職期間×寄与割合となります。