遺留分と価格賠償

2014-02-16

先日、夫が亡くなりましたが、公正証書遺言があり、その遺言では、「全ての遺産を妻(私)に相続させる」となっていました。ですので、私が全部の遺産を取得しました。ところが、先日、長男(夫と前妻との間の子)が私に対し遺留分を請求する旨内容証明郵便を送ってきました。遺産は、自宅(土地、建物)、現金(1200万円)があります。自宅の評価は、夫死亡時点で約1億円、現在は1億2千万円くらいです。法定相続人は、私(妻)、長男(前妻との間の子)、次男(私との間の子)、長女(私との間の子)です。私は、不動産は手元に残し、金銭を渡したいと考えています。どのような対処したらよいでしょうか。

 

遺留分減殺請求 をすると、対象不動産は、その割合で相続した人と遺留分権利者との間で共有関係になります。

金銭については、遺留分権利者は相続した人に対して遺留分割合の支払請求ができます。

なお、この場合の遺留分は、以下のとおりです。

長男 2分の1×3分の1×2分の1=12分の1

したがって、不動産は、あなたが 11/12、長男が 1/12 の持分を持ちます。

また、同時に、あなたに対して100万円の金銭支払い請求ができます。

しかし、あなたは、不動産の価額を弁償すれば、不動産を取得出来ます(民法1041条)。

あなたは、裁判において「裁判所が定めた価額により民法1041条の規定による価額の弁償をなす」旨の意思表示をすればよいのです。

民法1041条の規定による価額とは、夫死亡時の価額ではなく、裁判の口頭弁論が終結した時点で計算します。

あなたとしては、1億2000万円×12分の1=1000万円を支払うことで不動産を取得することが出来ます。

判決

最高裁判所平成9年2月25日判決(判例時報1597号66頁)

減殺請求をした遺留分権利者が遺贈の目的である不動産の持分移転登記手続を求める訴訟において、受遺者が、事実審口頭弁論終結前に、裁判所が定めた価額により民法1041条の規定による価額の弁償をする旨の意思表示をした場合には裁判所は、右訴訟の事実審口頭弁論終結時を算定の基準時として弁償すべき額を定めた上、受遺者が右の額を支払わなかったことを条件として遺留分権利者の請求を認容するべきである。

 

 

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