普通解雇と懲戒解雇

2014-03-01

懲戒解雇と普通解雇の関係等について教えて下さい。

 

普通解雇と懲戒解雇の違い

普通解雇は、民法上の解雇自由の原則を前提として、解雇権濫用法理(労契16条)によって、その解雇権行使に制限が加えられているものです。

他方で、懲戒解雇は使用者が有する労働者に対する懲戒権の行使を根拠にするものです。

普通解雇の場合は、権利濫用法理を用いていますので、解雇の意思表示をした時点において、客観的に存在するすべての事情を権利濫用の評価根拠事実、評価障害事実として主張することができ、総合的に判断して、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」ものであるか否かを検討します。

懲戒解雇は、懲戒事由の存在を前提とし、それに対する懲罰である以上、その懲戒事由を差し替えて、懲戒解雇の有効性を維持することはできません。

懲戒解雇に伴う不利益

懲戒解雇になると、解雇予告手当が支給されないとか、退職金が不支給になる場合が多いのも特徴的です。

解雇予告手当についての労働基準法20条1項但書に規定する除外事由「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当する場合が多いと思われ、懲戒解雇をするだけの非違行為を認めることができれば、解雇予告なく即時解雇できる場合が多いです。

しかし、懲戒解雇として有効な場合であっても、上記の「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当する程度の重大な服務規律違反が認められない場合もあり得ると一般には解されていますので、ここは格別の検討が必要です。

なお、労働基準法上、上記の解雇予告義務の除外事由は、行政官庁の認定を受ける必要がありますが、この認定は、行政庁による事実の確認手続にすぎず、これを受けないでなされた即時解雇の有効性を損なうものではないと解されています。

懲戒解雇と退職金不支給

多くの事例で、就業規則中の退職金規程に、懲戒解雇された場合には、退職金の全部又は一部が支払われないという退職金不支給条項があり、このような条項があれば、原則として懲戒解雇された場合には、退職金が支給されないことになる一方、上記のような退職金規定の退職金不支給条項を欠いていれば退職金は支給されることになります。

退職金不支給条項がある場合でも、上記条項は、退職金の法的性質が、賃金後払いの要素であると解されていることとの関係から、懲戒解雇事由があるだけでなく、当該事由が、「労働者のそれまでの勤続の功を抹消又は減殺させるほどの著しい背信行為」に該当する場合に不支給になると限定して解釈する裁判例が主流です。

 

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