交通事故と休業損害

2014-09-17

交通事故と休業損害

□働けなかったために収入を失った損害

休業損害は、事故により負傷し、その治療や入院のために働くことができなくなったために、本来受け取れるはずであった給料、または、労働できなかった損害の評価のことをいいます。例えば、負傷したために一ヶ月の賃金を貰えなかった、あるいは主婦が一ヶ月家事を行えなかった損害のことです。

休業損害を計算するには、一日当たりの賃金に、働けなかった日数を掛ければ、損害額が出ますので、非常に単純なようですが、実際の示談交渉では、そう簡単にはいかない事が多いです。

□収入はどのようにして決めるか

まず、問題になるのは、一日の収入をどう決めるのかです。

サラリーマンのように源泉徴収をされている人たちの場合は、特殊な例を除いては問題ありません。

ところが、自営業の場合や、賃労働者、大工などの職人さん、自由業の人たちの場合には、収入の算定をめぐってもめることが多いのです。

それは税金の申告をきちんとしていない人が少なくなく、しかも実収入は非常に高額だと主張することが多いからです。

また、主婦の場合、具合的収入がありませんので、家事労働をどういう基準で評価するかによって非常に異なった額になります。また、転職しようとしていた人や、仕事を探していた人たちの場合にも、争いの対象になります。

□休んだ期間の算定の仕方は

次に、働けなかった期間も争いになることがあります。入院期間について、「長期の入院、通院の必要性がなかった」とよく保険会社の担当者が主張することがあります。

また、通院期間についても、「通院の一定期間は、働けないのは分かるが、その後は就労には影響はない」とか、「通院日が丸一日働けないはずはない」などの争いです。

就労できるかどうかについては、主治医の意見が大変重要なポイントになると考えられます。

ただし、医師によっては、自信のない回答をされる方がおられ、それがよけいに紛争の種になる場合があります。

事故で負傷し、長期間欠勤したため、勤め先をクビになった、若しくは居づらくなって退職したという場合、働ける状態に戻るまでの休業損害をどう計算するかなどの問題もあります。

退職が事故だけによるのかどうか、退職にも千差万別の態様が考えられます。

裁判では、事故が原因による退職を認めた例もありますが、多くは事故と退職は相当因果関係がないとした例が多いです。

治療の途中で退職した場合の休業損害の算出ですが、退職後、治療が終了して働けるようになる間は、従来通りの休業損害は認められるべきです。

働ける状態になったが、現実には働くところがなく収入が得られないとしても、退職と事故の相当因果関係がなければ、休業損害の請求は認められません。

 

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