交通死亡事故〜高齢者〜

2014-03-11

交通死亡事故の逸失利益について教えて下さい。

最近は、彦根市でも高齢者が交通死亡事故の被害者になるケースが増えています。彦根市に交通事故多発警報が発せられています。

今回は、高齢者の方が交通死亡事故の被害者になってしまわれたケースも念頭に入れ、交通死亡事故における逸失利益についてお話します。

前提として、交通事故による損害賠償の実務では、逸失利益の算定には、一定の基準が用いられています。

死亡事故の場合の「就労可能年数」、後遺障害事故の場合の「労働能力喪失期間」の考え方です。

ここでは、死亡事故に限定してご説明致します。

まず、就労の始期について、事故当時被害者が未成年で未だ働いていないケースでは、原則として18歳から就労するものとします。例外として、大学卒業を前提にして「基礎収入」を算定する場合には、大学卒業予定時(通常は22歳)からとして、逸失利益を計算します。

次に、就労の終期については、原則として、事故時から67歳まで就労が可能であるとみて、その間事故がなければ得られたはずの収入はいくらか、という発想で逸失利益を計算します。

この例外として、事故時に既に高齢の被害者の方については、「67歳までの就労可能年数」と、「平均余命の2分の1」とを比べて、長い方の期間を「就労可能年数」又は「労働能力喪失期間」とします。

例えば、事故時に59歳だった男性被害者の死亡事故の場合、「平均余命の2分の1」は約11.68年ですので、67歳までの8年間より長い「11.68年」が「就労可能年数」となります(ただし、前にお話した「基礎収入」については、被害者が定年のある職業についている場合、定年後は定年前の収入より減額した収入が基礎収入とされます)。

この「平均余命」については、厚生労働省HPにも掲載されている「簡易生命表」が用いられます(ちなにみ、何歳になっても、平均余命がゼロになることはありません。例えば、平成22年の統計によると、70歳女性の平均余命は19.53年80歳男性の平均余命は8.57年 となっています)。

なお、高齢でも通常よりも長く働けることが確実であるような特殊事情があれば(開業医や弁護士等の場合)、裁判所は必ずしもこれまで述べた基準にしばられるわけではなく、「何歳まで働けると見るか」を事案に応じて具体的に認定してくれる場合もあります。

逸失利益の算定の基礎については、国民年金や厚生年金を受給している場合、平均余命の期間分等の年金受給額が逸失利益になります(生活費は控除されます(控除の割合はケースバイケース))。

なお、家事従事者(主婦、主夫、誰かのために家事をしている人)については、具体的な事情を主張立証することが条件になりますが、高齢者であっても逸失利益は認められるケースは多いと言えます。

 

ページの上部へ戻る

Copyright(c) 2014 石田法律事務所 All Rights Reserved.